アニメカタルシス

アニメの感想についてちょいちょい書きます

主人公は『みらい』でなく『りこ』? 魔法使いプリキュアテーマ推察

二人の性格の違い

OP曲の歌詞に『ヤバイよ!趣味バラバラ ノリちぐはぐ 性格真逆』とあるように「みらい」と「りこ」、この二人の性格は全くと言っていいほど違っている。みらいは実年齢は13歳ほどなのに熊のぬいぐるみが友達である事、服装のセンス等から平均より精神年齢が幼い事が分かる。逆にりこの性格は周囲に自分を認めさせたいという自立のような意欲を垣間見せる。
そもそもだが、二人は生まれた世界からして全く「別の世界」であり考え方や価値観が乖離しているのは当然のことかも知れない。


出会いのシーンが象徴するもの

第一話にはシリーズ全体の流れを示す意味合いが強い。 二人の出会いはみらいが落とした熊のぬいぐるみであるモフルンをりこが教えてあげる事により生じた。この一連のシーンが私にはとても意味深に感じ取れた。
みらいにとってモフルンはどういった存在なのかもう一度考えると、それは大切な友達である。しかしながら普通の中学生ほどの年齢の少女は、ほとんどの場合そういった子供の頃の"幻想や空想"を既に捨てている。みらいは未だにモフルンを大切にしている事から彼女が『空想に強く憧れを抱いており、魔法を非日常と結びつけている』事が分かる。
みらいと性格の離れたりこはどうか。彼女は魔法界出身の女の子であり、魔法を身近なものとして認知している。そんな彼女にとって『魔法がある世の中は現実の一部』であり、おそらく『空想への渇望が薄い』に違いない。
そんなりこがみらいにとって"空想の象徴"とも言えるモフルンが落ちた事を彼女に知らせたのは、『ただ二人が偶然出会ったというプロットを成立させるため』以外の意味があるように思えてならない。
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その後のシーンでも同じような描写がある。敵側のキャラクターであるバッティが出現させたヨクバールから逃げるため箒にまたがり空を飛ぶ最中、みらいがモフルンを離してしまう。しかしまたしてもりこはモフルンを守るため空中でキャッチする事を試みる。f:id:aioi7:20160229203647j:image
前述したように、みらいにとって空想が価値のある物でりこにとってはそうでない。りこがモフルンを守ろうとするのは「自分には存在しない価値を、相手にとっての価値として認める」態度だという事が分かる。

落下するりこの手をみらいがつなぎ、その後二人は魔法の呪文を唱える事で伝説の魔法使いプリキュアへと変身する。変身すると二人は、それ以前より少し大人びた見た目へと変化する。f:id:aioi7:20160229204851j:image
これはつまり「自分の中に無い価値観を受け入れる」という心的変化によって「大人へと成長する」事を暗示しているのだ。


この物語の主人公は

1話からシリーズ全体のテーマが読み取れたが、正にそのテーマが表面化している回が第4話である。りこははぐれたみらいを探す為に知識の森へと入る。その中は"動く本棚によって仕切られた迷路"のようになっている。f:id:aioi7:20160229204303j:image
この迷路はこの回でりこが自覚した「頭でっかちに考えすぎていて、なかなか行動に移せない」事の暗喩のように感じる。
りこはみらいの行動の中に自分を改善するヒントを見つけている。(="価値観が変化するきっかけ"になっている)
 本棚の空きスペースをくぐり、りこがみらい側にたどり着くのは"価値観の変化"を暗示しており、
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それが大人になるための方法だという1話で示されたテーマがそのままの形でなぞられている。このように、この物語は「りこが自分とは違う価値観に触れる事によって刺激を受けながら作用される成長物語」なのではないだろうかと考える。


初代プリキュアと比較して

この作品はたびたび初代プリキュアのオマージュが描写から散見される。初代プリキュアのテーマの1つに「ふたりは全く違うタイプ」という要素があり、価値観を共有する事が難しい仲である。魔法使いプリキュアはこれを更に強調する為にふたりを「全く別の世界の住人」であように設定したのではないだろうか。


今後の展開に期待する事

第5話は二人が衝突する事が予告により明らかになった。どのように価値観が衝突し、それを乗り越えて成長するのかに注目したい。