アニメカタルシス

アニメの感想についてちょいちょい書きます

『フォードvsフェラーリ』感想

これは車に興味ない人にも是非観て欲しいって思えるほど名作だった… 

ケンの奥さんが、ケンが本心を隠している事に腹を立ててあえて危険な運転するところの気性の荒さとか、ケンとシェルビーの喧嘩のくだりでシェルビーが加減して飲み物の缶ではなくお菓子の袋を持ってケンを殴ったりするところとか心情描写がとても細やか。


他にもフォードの役員が買収のためにフェラーリを視察する時の「マフィアが自由の女神を買いに行くようなもの」「どちらがマフィアか分からない」といったくすぐられる台詞回し等素直に楽しめる要素が多かった。


そのうえで、えぐり出し投げかけているテーマは素直に受け止めにくいところが絶妙だったのが本作だと思う。


「7000回転の世界」の詩が示す『アメリカ人とは何者か』という問いが全体に蔓延していて、それは挑戦者としてのシェルビーとケンにまつわるものではあったし、先代が「開拓」した道筋を受け継いだ2代目フォード社長にもかかってると思った。


当初そのモチーフは「挑戦を諦めないアメリカ人の開拓精神」って形でかかってくるものだと思っていたのだけど、結末を見るとその印象がガラッと変わってくる。企業体としてのフォードからは既に開拓者精神は失われたという強烈な批判が、イギリス人であるケンとの対比でより強く浮き彫りにされた印象を受けた。